Makuakeに聞きました。飲食店のクラウドファンディング「成功のコツ」と「失敗の理由」とは

【ざっくり要約】

  • 資金集めやマーケティング、PRにも効果が
  • スタッフや常連さまも巻き込んで情報拡散を
  • 値付け・見せ方はプロのノウハウを活用

新聞の折り込みチラシ、ダイレクトメール、メディアへの掲載など、新店舗のプロモーションには様々な手法があります。しかし今現在、新聞の折り込みチラシは“自宅で新聞を消費している層”の、また一部にしかリーチしません。ダイレクトメールも、あらかじめ客層をターゲッティングしたメールリストを会得していなければ、メールソフトのゴミ箱に自動移動されるケースも増えてきました。

著名人を呼んだオープニングパーティや、関係者だけが集まるレセプションパーティなどは、そのレポートがメディアの記事・動画コンテンツとして多くの方の目に届くのですが、コストはかかります。また昨今では、関係性を明示しているにもかかわらず「ステルスマーケティングじゃないか?」というコメントが寄せられるというデメリットが発生するケースも見受けられます。

近年、新たなプロモーションのテクニックとして注目されている方法があります。それはクラウドファンディング。不特定多数の方が特定のプロジェクトに支援する、新しい資金調達方法としても注目されています。

クラウドファンディングの仕組み自体は17世紀頃からありました(一般に書籍の印刷費用の寄付を募り、寄付した方の名前を書籍に掲載)。近年のクラウドファンディングは2009年にアメリカでKickstarterというサービスが誕生して以来、インターネットを通じてプロジェクトをアピールして、その理念や支援するともらうことが出来るリターンに魅力を感じた方から資金を集めています。

一般的に製品やサービスに関係するプロジェクトが多いと思われがち。しかし日本では、外食産業がクラウドファンディングを利用する例が増えています。サイバーエージェント・クラウドファンディングが提供している「Makuake」では、今まで以下のようなプロジェクトが提案されてきました。

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ローストホース

目的 調理機材の費用の出資を募る
目標金額 3,240,000円
調達金額 6,002,111円

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C by favy

目的 食材の仕入先開拓費用の出資を募る
目標金額 800,000円
調達金額 3,573,000円

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KURAND SAKE MARKET 池袋

目的 仕入れ、経費、店舗プロモーション費の出資を募る
目標金額 648,000円
調達金額 3,163,644円

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CROSSOM MORITA

目的 調理機材の費用の出資を募る
目標金額 3,000,000円
調達金額 10,060,000円

製品やサービスと違って飲食店は、その地域に足を運ぶことができる人が対象となります。いずれも人口密度の高い東京圏ではありますが、それでもターゲットである顧客層にリーチすることは本来難しいと言われます。しかし上でご紹介したプロジェクトでは、支援した人しかお店に行けない会員店の会員権や、割安価格でコースメニューを楽しめるといったリターンの魅力によって、多くの支援者から資金を調達することに成功しました。

オープン前からのファン層開拓は、今までのプロモーション手法では叶えられにくいものでした。しかしクラウドファンディングを使えば、先にお金を支払ってでも店舗を応援し、開店後一年が経過したとしても予約しつづけ、友人と連れだって店舗に訪れるファン層を多く、掴むことができます。

では、誰でも、クラウドファンディングを使えば足りない資金を集め、プロモーションを成功させることができるのでしょうか。答えは「No」です。

実際に人気店となるかどうかの事前調査もできるクラウドファンディング

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飲食業界でクラウドファンディングを使うには、どのようなところに気を配るべきなのでしょうか。Makuakeを運営するサイバーエージェント・クラウドファンディングの取締役・坊垣佳奈さんにお話を伺ってきました。

Makuakeのサービスがはじまったのは2013年。ジャンルを問わず様々なプロジェクトに取り組むなか、飲食店ジャンルのプロジェクトが増加し始めたのは2014年のことだそうです。

「幅広くいろんなプロジェクトをお受けしているなかで飲食店にまつわるプロジェクトがあったんですよ。活用方法によってはご一緒できるなと思いました」

未経験の分野ゆえに、考えなくてはならないことはたくさんありました。しかし他のジャンルでのクラウドファンディングの成功事例はあります。資金集めだけではなく、マーケティングやプロモーションの効果があるということもわかってきたので、その知見を生かした上で、飲食店開業にクラウドファンディングを使うならどうしていくのがいいのかを一緒に考えていったということです。

「店がオープンする前のプロモーションもできる、その店舗が実際に人気店となるかどうかの調査もできる。そういったお話をさせていただいてプロジェクトを実行者とご一緒に組み立てていきました。」

プロジェクト実行者と、その周囲にいる方も積極的に情報発信

一例として、前述したローストホースのプロジェクトに関してお話しいただきました。

「完成したお店をみたとき、期待を超えていってくださったので、非常に良かったと思っています。お店ができて話題になっているから行ってみた、というお店とは違うので、多少心配はありました。ウェブページの上で、画像や動画などは用意していますが、イメージしかない状態でお金を出してくださった皆さまが『支援してよかった』と思ってくださるかどうかは、完成した店舗次第なんですよね。私たちは、クラウドファンディングのプロジェクトはお手伝いはできても、店舗の完成度まではどうしても噛んでいけないので」

ではローストホースの場合、どのような支援者が多く集まったのでしょうか。

「もともと、ローストホースを立ち上げた平山さんが以前に店長をやられていたロッキー馬力屋の常連さんから火がついたところはありました」

プロジェクト実行者で、ローストホースのオーナーである平山峰吉氏のバックグラウンドがあってこそ、期待度の高さにつながった事例とのことです。平山氏は東京・渋谷のロッキー馬力屋という馬肉専門店の元店主。渋谷界隈の肉好きの間で話題となることの多い店舗でした。独立して、独自の視点で店舗を経営するとのことで、最初は“平山さんがやるお店だから”支援するという方が多かったそうです。次に、ロッキー馬力屋を知っている・行ったことがあるという方が集まってきました。そして彼らがFacebookやTwitterなどで「Makuakeで支援した人しかお店に行けない、美味しい馬肉のお店ができるよ」とプロジェクトページをシェアしたことで、より広い層に情報が行き渡り、さらにメディアが記事として取り上げたことにより、最終的には平山氏もロッキー馬力屋も知らない方々からの支援も集まりました。

いわばロッキー馬力屋が好き・平山氏が好きという方々の中で、いち早く情報を察知した方々が中心となり、肉料理が好きという人々を巻きこんで支援ムーブメントを盛り上げていったーーという格好です。

では、クラウドファンディングを利用するとして、どのようにその情報を拡散していけばいいのでしょうか。

「お店の以前からのお客さまなどに、リアルなお声がけも含めていろんな手段で伝えてもらっています。会員組織があるならメール配信などもいいですね。あるいは、お店の従業員の方が個人のFacebookなどで発信するとか」

プロジェクト実行者だけではなく、スタッフと仲のいいお客さまもいるでしょう。そういう方々に新店舗のことをポジティブに感じてもらうための活動も重要だそうです。

「一概に『このやりかたで』というのはないんです。プロジェクト実行者の方とご相談して、できることをやってもらっています」

Makuakeに限らず、クラウドファンディングのウェブページは適宜アップデートできます。また外部から見ていると、クラウドファンディングは最初と最後に支援が多く集まっています。そういう意味では、たとえば段階的な情報解禁が有効な方法になるのでしょうか。

「最初と最後が盛り上がるのは、クラウドファンディング全般の傾向なんですよ。飲食に限らず、です。プロジェクトオープン時にいち早く支援する方と、検討時期を経て最後に駆け込みで支援する方の、両方がいるんですね」

そこで大切になるのが、プロジェクト公開前に、どれくらいの会員数・支援者数が集まればいいのかの計算を行った上で、リターンのメニューを作り込むこと。
しかしローストホースはイレギュラーでした。すごくうまくいって、想定以上に支援が集まりすぎてしまいました。

「これ以上支援者が集まると予約がとれなくなっちゃうということで、急遽プロジェクトを終了したのです」

支援してくれた方の満足度が下がっちゃうのは一番避けたい。だからこそ目標金額や、支援時のリターンのメニュー、人数制限が重要とのことです。

リターンの価格帯の設定と満足度の関係性

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Makuakeでの飲食店舗関連プロジェクトの成功例を見ると、目標金額も支援額の価格もリターンの内容もまちまちです。どういう設定にすれば多くの支援者が集まるのか、坊垣さんのおっしゃっていた“一概に「このやりかたで」というのはない”ということなのでしょう。

「プロジェクトの目標金額によって、見せ方の設計は変えています。たとえば高価格帯のコースは完全会員組織化したり、このコースがここでしか食べられないという特別感のある設計をすることが多いですね。そして低価格帯のものはお得感を重視しています」

一例としてムール貝の食べ放題をテーマとしたプロジェクト、C by favyのお話を聞きました。

「大量に仕入れられないから高価格帯となってしまう食材を、大量に仕入れる環境にするから単価を下げて、食べ放題のメニューが提案できるーーそういう仕組みなんですけど、より安く美味しく食べてもらうということをクラウドファンディングでは実現しようと考えました」

どれくらいの価格だったら多くの支援者が集まるのか。とくに、ムール貝という貝のなかでも一品種となるものの注目度を高めるためにはどうすればいいのか。正直、難しいなとは感じたそうです。

「ですので、多くの人から支援を集めるために”ムール貝食べ放題会員“と打ち出そう、と考えました。リピートしやすいし、口コミも広がっていくだろうという狙いもありました」

ここで気になるのは、プロジェクト実行者との感覚のズレがあるのかどうか、でした。

「飲食店をやられる方は、すでに経営のノウハウをお持ちです。でもクラウドファンディングでどういう値付けにするか、見せ方にするかは違う話で、私たちがそれをアドバイスしています」

時にはプロジェクト実行者とぶつかることもあります。

「プロモーション重視か、マーケティング重視か、資金調達が重視か。その部分は先方のプロジェクトなのでおまかせしています」

そこが定まったうえで、クラウドファンディングを使うメリットがでてきますし、アドバイスもできるようになる、と。

「しかし、クラウドファンディングの実施自体にこだわりすぎると、クラウドファンディングをやることの意味がなくなってしまいます。もし成功がないとお店が上手くいかないと思ってらっしゃるのであれば、そこはがんばりましょう、というお話をすることもあります。コンサル業ではないので、プロジェクト提案者さんの『こうしたい』という気持ちを優先しつつ、とはいってもこちらが把握しているうまくいかないと思える部分は徹底的に話し合います」

なおウェブページでの見せ方として重要なのは画像や動画といったビジュアルです。文章だけでは経営者のフィロソフィーも店舗の魅力も伝えきれません。

「開業前なのでビジュアルが用意ができない、というケースがあります。でも食事にしても内装にしても、現実に近いモノを情報としてご提供できるかどうかが重要です」

何が食べられるのか、どれだけ飲めるのか。そこに魅力を感じてもらうための仕掛けということですね。

「ゴールは一緒。向かっている方向は一緒なんです」

クラウドファンディングを使ったからといって成功するわけではない

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いままでクラウドファンディングで目的を達成させるためのポイントを聞いてきましたが、では逆に、失敗しやすい取り組み方というのはあるのでしょうか。

「クラウドファンディングを使えば自然とお金が集まって万事がうまくいく、と思っている人たちはいます。クラウドファンディングのウェブページは、その情報を世の中にはじめて出す場所ではあるのですが、ライバルはたくさんいますし、他の情報もたくさんあります。ゆえにアピールすることが大事なんです」

これは前述した、情報拡散のポイントと密接につながるところでもあります。

「クラウドファンディングやればお金が集まるでしょ、という意識だと厳しいですね。本気で成功させるためにはどうやればいいのかを考えず、何かをアドバイスしても手をつけずにオープン日を迎えて“いわれたとおりだった”みたいな話になったり。これから来てくれるお客さんを見ていないといけませんよね」

クラウドファンディングを見て支援される方は、最初のお客さんとなる可能性がとても高い。店舗を見ていないし口コミもない段階でお金を出すということは、さらなる可能性を秘めた顧客になる。
だからこそ大事にすべき存在だそうです。

「プロジェクトの支援者にとって、新たな店舗や関係者の方を応援したいという気持ちもあり支援をしているように思います。実行者は、そんな支援者の気持ちも、お店の経営に生かしていけるようにコミュニケーションをとっていくことが大事ですね」

取材を終えて感じたこと。それはクラウドファンディングのウェブページに情報を掲載することがゴールではなく、スタートなのだということでした。そしてプロモーション会社に依頼して自分たちの新店舗情報を広めてもらうのではなく、SNSを活用して自分たちで拡散していくことも重要だということ。すなわち、クラウドファンディングは口コミの力を最大限に活用できる存在でもあるのだと感じました。

現在もMakuakeには数多くの飲食店プロジェクト情報が掲載されています。中にはKURAND SAKE MARKET のように、日本酒飲み放題という業態を定着させたプロジェクトもあります。新たな店舗を設計するとき、何を特徴とするのか。そのヒントもありそうですね。

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クラウドファンディング - Makuake(マクアケ)

著者プロフィール

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武者良太
1971年、埼玉県生まれ。80年代後半からライター活動をはじめ、90年代に出版社に入社。編集、撮影、デザインのスキルを身につけ、再度フリーランスに戻る。ギズモードジャパン、モノマガジン、デジモノ、Wired等のメディアに寄稿。元Kotaku Japan編集長。

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