【レポート】FOODiT TOKYO 2016「FOODiT未来総研が大胆予測!外食産業の10年後はこうなる」

去る8月22日、外食業界のリーダーたちが一堂に集結したカンファレンス「FOODiT TOKYO 2016」(主催:株式会社トレタ)が、東京・丸の内のJPタワーホール&カンファレンスにて開催されました。今年で2回目の開催となるFOODiTは「未来の外食創造へ。さらに深く、一歩先に。」と題して、多角的に議論を展開。飲食業界が抱える様々なテーマを軸に、これからの業界の「あるべき姿」についての講演・パネルディスカッションが繰り広げられました。
「明日のレストラン」では、業界関係者から大きな注目を集めた数々のプログラムのなかから、代表的なセッションの内容をレポートしていきます。(編集部)

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10年後。外食産業をとりまく世界はどのような変貌を遂げているのでしょうか。この難問を、リーダーシップを握る人にとっては常に意識して、改革を目指さなくてはなりません。
FOODiT TOKYO 2016の最後に開催されたクロージングセッション、そのテーマは「FOODiT未来総研が大胆予測!外食産業の10年後はこうなる」。新しい外食産業を切り開いてきたキーマンたちとともに未来を予測してみました。

<登壇者>
株式会社カゲン 取締役 子安大輔氏
カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長 楠本修二郎氏
株式会社トレタ 代表取締役 中村仁
株式会社トレタ CMO 瀬川 憲一

陰りが見える10年後の社会

10年後どうなっているかという話をする前に、10年ってどれぐらいの期間で、世間はどう変わるのかを意識するために、2006年からの数年間に起きた“事件”を共有するところからセッションが始まりました。

2006年 メタボという文字が新語流行語大賞を取得。以後健康ブームが起きる。
2007年 マクドナルドのメガマックが販売開始。期間限定メニューでしたが、流行語大賞を取るほどの大ヒット。
2008年 キーワードはハイボール。サントリー角瓶のCMに小雪が起用され、いにしえのカクテルだったハイボールがメジャーな飲み物として復活。
2009年 総合居酒屋のピーク。3月期、ワタミ株式会社の連結売上高が1112億(経常利益61億円)を記録。

瀬川「2010年から2014年のわずか数年間で、8%から64%と劇的に急拡大したものがあります。それはスマートフォンです。今はスマートフォンでお店を探したり、スマートフォンで予約したりというのが当たり前の時代ですが、2008年以前では見られなかったんですね。実は10年経っていないんです。SNSも2010年時点の利用者は300万人しかいませんでした。2014年には2400万人にもなっています。10年間というのは、遠い未来でもないですが、世の中の風景を大きく変えてしまうには十分な期間なんですね」

だからこそ10年先を考えなくてはいけない。では、2016年。社会はどうなっているのでしょうか。まず総人口が減少し、高齢化率が上がるという予測が立っています。だいたいの数字になりますが、2025年には総人口が600万人減少。そして高齢化率が30.3%に上昇。

瀬川「最も最悪な予想で言うと、この10年間で600万人の労働人口がなくなります。今の労働人口は6000万人位ですが、そのうちの10%がなくなる。すべての業界で、同じだけ減っていったとしたら、10人に1人がいなくなります」

そのような予測が立てられるなか、2016年6月にトヨタ自動車は総合職の在宅勤務制度を大幅に拡充するというリリースを出しています。フルタイムで働いてもらうほうがいいのは事実ですが、労働力を確保するために、大手企業が動き始めています。

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▲写真上段・左より、楠本修二郎氏、子安大輔氏 。写真下段・左より、瀬川憲一、中村仁。

瀬川「会社に来なくてもいいから働いてほしい。そんな時代がやってきます。時間や場所にとらわれない多様な働き方を認めるというか、認めざるを得ない社会というのがこの10年後にやってきます。ということは、交通量も変わってくる。街の形も少しずつですが変わってくることが予想されます」

こうした社会全体の変化によって、結果として外食人口が減少していくのではないかというわけです。しかしその一方で、海外からの旅行者は年々増え続けており、今後さらにインバウント需要が大きく拡大するだろうという予測もあります。

楠本「2015年のインバウンドは1900万人でした。政府は2030年までに6000万人を目指すと上方修正しました。ここ数年で海外からの旅行客が増えて、街の景色がめちゃめちゃ変わりましたよね。これがさらに6000万人になると、すごいインパクトです。なので、外食産業でポジティブな要素を考えましょうと。英語を喋れる喋れないの問題ではなくて、日本全体がやはり楽しくて、美味しくて、素敵であればそこに来たいなということですから。インバウンド6000万人、僕は可能ではないかと思います。外食あるいは観光、農業。そういったところも、産業の垣根を作らずに、ひとつのウェルカムチームみたいに盛り上げていくということができたらいいなと思っています」

テクノロジーによって現場の形が変わっていく

10年後の外食産業において、まず考えられるのがAIの発展によるスタッフのサポートテクノロジーです。

お客様の注文履歴は今のシステムでも確認できますが、AIとセンシングの技術によって健康状態や感情などを把握。スタッフにその情報をリアルタイムで伝え、お客様の求めるものに一番フィットした料理を提案する。ホールスタッフの裏側で、機械からそんなアドバイスをもらいながら接客を行うようなバックヤードシステムが実現するかもしれません。

このシステムがあれば、もはや接客は人間のスタッフではなく、ロボットや、画面内のアバターが受け持ってコミュニケーションすることも十分可能になります。

中村「高度な接客ができるスタッフはすごく重要な戦力だったけれども、そういう人がいなくても機械ができちゃうよ、という世界がくるかもしれない。お店の付加価値はどこにあるのか、という議論が出てきそうです」

楠本「外食がすごいのは、やはり接客。つまり、お客様を持っているということ。このお客様を持っているという感覚は絶対に農家さんにとっても、食品メーカーさんにとっても、あるいは白物家電のメーカーさんにとっても、感覚としてないものなんですね。これはAIで学ばせることはある程度はできるけれども、それを先手を取ってコントロールして、この方向に行くぞという指示出しをするのは、やっぱり外食なんだ僕は思いますね」

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2017年には、一流のシェフの味を再現してくれるコンシューマー用の調理ロボットが販売されるそうです。価格は800〜900万と言われていますが、10年の価格は1/10、いや1/20になったとしても不思議ではありません。調理方法のデータもデジタルで共有されるようになるのではないでしょうか。

中村「クックパッドなどのレシピ共有サイトが、この辺をやってくるかも知れないと予想できますね。レシピデータに調理『技術』のデータを合わせて、ネットで流通させて、それを家庭のロボットで再現することを可能にする、と」

子安「料理人の側からしたら、すごく夢のある話だと思っています。すごい技術を持っている人だったら、今までは自分の店を持って、そこに来るお客様しか相手にできないし、席の数で売り上げ決まってたのですが、こういうシステムができたら世界中で自分の料理を出せるようになるわけじゃないですか。そうすると、本当に技術がある人であれば、そのデータがお金を稼いでくれる。もし死んでしまったあとも、技術を遺産として残せる」

中村「これを踏まえて話していたアイデアなんですけどね。音楽の場合で言うと「DJ」という職種があります。DJというのは、自分で音楽を作るわけでなく、アーティストが曲を作って演奏したものを選択してつなぎ合わせ、再パッケージにする仕事なんですよね。実は料理技術もそういう風にデータ化されてしまうと、料理人ではない第三者が自由に取捨選択して組み合わせて提供するなんて仕事が生まれるかもしれない。いわば「フードDJ」です。プロジェクションマッピングで空間を持ってくる、料理を世界中からセレクトして持ってくる、これをパッケージして売る編集作業みたいなことをして、キュレーションするというようなことも、もしかしたら新しい職業として出てくるよね、という」

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VRの技術が発達したら、自宅でありながら他の空間にいるようなコンテンツも提供できるようになることは十分に考えられます。また、遠く離れた友人と同じ場所で食事しているかのような、バーチャルリアリティ飲み会なんてこともできるでしょう。そして前述した調理ロボがレシピデータを共有して同じ料理を作れば、空間、そして距離の制限がなくなります。

中村「VR上では、人を呼ぶ、人を召還するみたいなことができるのですが、言ってみれば自分の部屋を飲食店みたいなインテリアに見せてしまうということもできてしまう。そうすると飲食店の場づくりってなんだっけ、空間ってなんだっけ、というところも、もしかしたらこれで根本的に変わってしまう可能性もある」

楠本「UBERとかAirbnbとか新しいシェアリングエコノミーの一種と言われているでしょ? 飲食店もそうなっていくとすると、僕は地方が面白くなるなと思いますね。本来はレストランじゃないような空間にレストランが出現するっていう、エアレストランみたいなものが増えるのではないかと思うんです。また街が変わるというのはどういうことかというと、地方にもポジティブなチャンスが生まれるということ。街と地方の関係性が一極集中ではなく分散型になるということですから、これも別に悪いことではないなと思うんです。あと予防医療との連動みたいなのもテクノロジーの進化でどんどん進んでいくだろうし、この5年間で相当新しい領域になっていくのではないでしょうか」

世界が変わるなら、先鞭をつけるのも1つの手

子安「僕、今回の未来総研のシナリオを一緒に考えていくにあたって、一瞬ちょっと暗い気持ちになってしまったのが正直なところなんです。飲食店に本当に未来があるのかどうか。結論としては、テクノロジーの進化が来る来ないという話は、10年後かどうかはさておき、来てしまうのだと思っているんです。それを望む望まないというのは別の話なのですが、来ると分かっていれば、それにどうやって関わっていくかというのは考えざるを得ないかなと思います。

例えば自動運転とか、ドローンとか、ウェアラブル端末とかいうニュース最近メディアですごく多いと思うのですが、飲食に関わる皆さんがそれを自分事としてとらえているという感じがあまりしないなと思っています。それはそれ、自動車業界の話でしょ、タクシー業界の話でしょ、と。そういう話と飲食店が、非常に分断されているんじゃないかなと。ただ、10年くらいのスパンで考えると、一気にその距離が近づいてくるはずなんですよ。例えば自動運転によって、デリバリーの概念がガラッと変わる可能性がありますよね。例えば宅配ピザとかの拠点に超高性能超マシーンが入ってしまって、自動運転やドローンで自宅に届けられるとなると、人件費の概念が全く変わってしまったりする。そうなってくると『あれ?飲食店って行かなくていいんじゃないの?』という話が起きてしまう可能性があります。

だとしたら、自分たちにそういう未来が来るのだとしたら、先にやるというのも手でしょうし、違うことを考えるということも手でしょう。今日ゴールとしては、そういうところに対して関心とか、自分事になってもらうというのが大切かなと思っています」

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リモートワークが増えて外出の機会が減り、自宅でもおいしい料理を美しい空間の中で食べられるような未来。でも、リアルなエクスペリエンスを求める声はなくならないでしょう。

だからこそ、他業種であっても今起きているイノベーションを理解し、それを自分たちの業種に転換するのか、もしくは新たなチャレンジをするのか。どの答えが適切なのかは、ポジションによって異なるかも知れません。しかし、だからこそ未来を考え続けることをやめてはならないのではないか。このセッションを聴いて、そう感じました。

著者プロフィール

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武者良太
1971年、埼玉県生まれ。80年代後半からライター活動をはじめ、90年代に出版社に入社。編集、撮影、デザインのスキルを身につけ、再度フリーランスに戻る。ギズモードジャパン、モノマガジン、デジモノ、Wired等のメディアに寄稿。元Kotaku Japan編集長。

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