• レポート
  • 2016.9.14

【レポート】FOODIT TOKYO 2016「外食産業のASEAN進出 成功の秘訣、失敗の理由」

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2016年8月22日、外食業界のリーダーたちが一堂に集結したカンファレンス「FOODiT TOKYO 2016」(主催:株式会社トレタ)が、東京・丸の内のJPタワーホール&カンファレンスにて開催されました。2回目となる今回は「未来の外食創造へ。さらに深く、一歩先に。」と題し、飲食業界が抱えるさまざまなテーマを軸に、講演やパネルディスカッションが繰り広げられました。

外食産業の海外進出支援や事業開発などを手がける佐藤信之氏と、戸田顕司氏がASEAN諸国への外食企業進出の現状についてのトークを繰り広げました。


<登壇者>
左:株式会社epoc 代表取締役 佐藤信之氏
右:日経BP社 日経トップリーダー事業開発部長 戸田顕司氏

7業態が集まる日本食フードコートをタイ・バンコクで運営

戸田 バンコクにはすでに日本食レストランがたくさんある中で、なぜ「88食堂NIPPON」という新コンセプトの店をを立ち上げたのでしょうか。

佐藤 2015年12月、バンコク中心部の大きな商業施設にオープンしました。タイは観光客が100万人ぐらい来日するほど日本が好きで、日本食にも大きな興味を持たれています。日本と同じ味を求める傾向が強くなると思い、あえて日本的なコンセプトのネーミングになりました。

業態は、すし、鉄板焼き、ラーメン、洋食、和定食、焼き鳥、カフェの7つ。我々がブランドのライセンシーになってそれぞれの店舗自体を一括して運営するという珍しい方式をとっています。


▲株式会社epoc 代表取締役 佐藤信之氏

戸田 オープンして約半年経過した手応えは?

佐藤 フードコートの一括運営はリスクは高いが、やってよかったですね。サービス感を統一しやすいし、料理の質が下がってもすぐ改善できます。現在、輸入は魚や和牛、果物など以外、食材の95%は現地で調達しています。

戸田 スタッフの教育とか、日本式のサービスの徹底は?

佐藤 めちゃくちゃ難しいです。日本語が通じるスタッフをある程度雇って指導し、通訳も入れながら定期的にサービス教育を進めています。

国内と同じようにリサーチしなければ成功できない

戸田 現在、バンコク全体の日本食レストラン市場は?

佐藤 日本食レストランは、バンコク市内で1500軒ほど、タイ全体で2000軒。日本人がダイレクトに経営しているのは1割程度、それ以外は「吉野家」や「CoCo壱番屋」など大手ブランドのフランチャイズ展開です。

日本への観光客が年に約30%ずつ増えているので、タイの人が味やサービスの違いをはっきりと認識するようになる。タイでビジネスをするなら独自性を持った業態でひとつひとつ出店し、将来的に20~30店舗を作る感覚でいいのではないかと感じています。


▲日経BP社 日経トップリーダー事業開発部長 食ビジネス シニアリサーチャー 戸田顕司氏

佐藤 タイはとにかく取り入れるのが早いんです。流行っているブランドがあったら声をかけて持ってくるというスピード感があるので、流行りものの業態で進出するのはしんどい。

戸田 撤退したケースの根本的な理由はどこにあると思いますか。

佐藤 いちばんは「人」ですね。言葉が違うし、食習慣も違います。店舗運営には国内マーケットと同じように人材を投入しないと勝てません。

戸田 日本の市場は厳しいが、アジアの市場は伸びているからと進出するケースもあると思います。

佐藤 僕は国内・海外でわけて考えない。マーケットを考える時は、日本と同じように海外のマーケットを考えないとダメです。東京で成功している企業は、相当リサーチしますよね。海外でも同じです。それをやらずに「後からなんとなくアジャストする」では、苦しむ。

戸田 「アジャスト」というのは「味」を現地に合わせるということですか。

佐藤 味も、ポーション(1皿の分量)、値段、サービスのスタイルなども。タイは3年前より価格にシビアになったと感じます。価格が高いと売れません。食材の現地調達に手を出そうと思ったのはそれが理由です。

戸田 市場は大きいし、人口がいて熱気むんむんで進出したいと思うけど、ハードルは高い。

佐藤 でも当たるとインパクトが違います。プロモーションも、圧倒的にSNSが強い。情報の伝播にスピード感があります。

インドネシアやフィリピンなど人口の多い市場に期待

戸田 他のASEAN地域で可能性を感じるのはどこですか。

佐藤 まず、約2億4000万人もの人口を持つインドネシア。それと富裕層が増えて国内需要が増えているフィリピンに注目しています。なぜタイからスタートしたかというと、これから交通の便がよくなるだろうと考えて、タイから周辺国に広げる戦略を立てているのです。

戸田 どこにどう進出していくのかーー現地の人の流れやどういう業態が合うのかを見て、実際に出したらアジャストしていくのを繰り返すということですね。

佐藤 そうです。やっぱり東京はすごいマーケットですよ。1971年にマクドナルドが日本に進出してから、40年でものすごく進化した。東南アジアはインターネットが日本より先に整備されているので、おそらく日本の半分ほどのスピードでマーケットが醸成されます。

日本を鏡にして見て、他の地域同士を比較していくと、その地域のステージがなんとなくわかるはず。その予測に基づいて進出するのが戦略的には正しい。

戸田 東京で起きていることは、何年後かにはミャンマーでも起き、その間にはバンコクなどでも起きるだろうということですね。

佐藤 そうです。東南アジアはこれからどんどん伸びる市場なので、ぜひチャレンジしていただきたいですし、お役に立てることがあればと思います。

(敬称略 ※一部内容を変更しています。2017年6月8日)

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  • この記事を書いた人

    安蔵靖志

IT・家電ジャーナリスト 家電製品総合アドバイザー。AllAbout 家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。記事執筆のほか、テレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ〜ンの家電ソムリエ」に出演中。日経DUALにてコラム「使って、作って、食べてみた! お弁当男子×家電」を連載中。