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  • 2016.1.8

いまさら人には聞けない!?「TPP」が飲食店経営に及ぼす影響について説明しましょう!

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ここ数年日本を騒がせているTPP。先日大筋合意に達したとの報道があり、再び世間の関心が高まっています。とはいうものの、「外食産業にも影響があるとは聞いてるけど、忙しくて調べてられないよ……」という人も多いのではないでしょうか? 今回はそんな「TPP」の具体的な中身を簡潔に説明、特に外食産業への影響にも迫ります。

要するにTPPって何なの?

TPPとは正式名称「環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)」の略で、アメリカやシンガポール、オーストラリア、チリなど太平洋を囲む国々による自由貿易についての協定です。政府は成長戦略の1つとしてさまざまな国との貿易パートナーシップを掲げており、2018年までに協定締結国との貿易額を70%まで引き上げるとしています。

TPPもそのうちの1つですが、規模が大きく、人口が世界の1割近くとなる8億人、さらにGDPとしては約3,100兆円となり、世界の約4割を占める経済圏が誕生することになります。その中でモノ・カネ・ヒト・サービスを自由に流通させることができるため、日本にとって魅力的な協定であるとされています。取り決めがなされる分野は非常に多岐にわたっており、自動車や食品などの関税に関する条項だけではなく、保険や政府調達の国内企業への優遇措置の撤廃、さらには女性の社会進出促進や賄賂の禁止などまで含まれています。

自由貿易ってつまり……?

TPPでうたわれている自由貿易とは、簡単にいえば国と国同士が貿易をする際にある関税をはじめとしたさまざまな壁を取り除いたり緩和したりして貿易をもっと促進しよう、ということです。TPPが騒がれている理由として、この自由化の度合いが非常に高いという点があります。特に、日本は国内産業を守るために農作物への関税を高く設定しているため、TPP批准後には外食産業にも影響が出ることが予想されています。

日本は協定締結の交渉にあたって、米、麦、肉(牛・豚)、乳製品、甘味資源作物(砂糖、でんぷん)を重要5品目として引き続き国内産業に打撃を与えないよう調整していました。その結果、5品目での自由化には制限が加えられることとなりました。これ以外で関税が即時撤廃される品目としては、ぶどう、なす、かぼちゃ、メロン、うどん・そば、七面鳥など農産物とかき、たこ、えび、かつおなどの水産物があります。鶏肉や鶏卵、マーガリンについては即時撤廃ではないものの、6~11年目以降での関税撤廃が目指されています。

日本の外食産業への影響は?

外食産業にとって即座にメリットとなるのはずばり、調達コストの低減です。上述した以外にも全部で1,855品目での関税撤廃が合意されているため、一般的な飲食店であればほとんどの場合恩恵を受けるといえるでしょう。即時撤廃されるもののほとんどは6~9%程度の関税率なので大きな差にはなりにくいかもしれませんが、前段で述べた重要5品目は大きな差となって表れそうです。

関税が全くなくなるわけではないものの、牛肉はこれまで4割近い税がかけられていたため、段階的にこれが引き下げられればコストメリットが見込まれます。また、牛肉と違い鶏肉は関税の完全撤廃となるので、外国産との競争の激化が見込まれています。ほかにも、米の輸入枠拡大も焦点の1つのため、外国産の米の取り扱いが増えて、飲食店にとってはより料理との相性のいい米を選べるようになる可能性もあります。

大筋合意に達した、とはいえ実際に効力が発生するまでにはまだ時間を要する状況です。このため、現段階ではほとんどの企業は見守り段階にあるといえます。注意しないといけないのは、外食は流通の最終段階の「小売り」であるため、最初の動向はメーカーや卸業者に起こるということです。外食産業への影響をタイムリーにつかんでいくためには、食材の仕入れ先の動向に目を光らせてみることも有用でしょう。

そうした食材について、既に米や肉で外国産の取り扱いが増えることについては述べましたが、実はこれは飲食店にとって調達コスト低減以外にも期待できる部分があります。それが、国内産の付加価値向上です。日本の消費者は「食の安全」に極めて敏感で、そういった面からの懸念の声は既に上がっています。

つまり、安い外国産の食材が増加しても、飲食店に来られるお客さまにとっては心配が増えるおそれもあるのです。これは相対的に、安全が確認された国内産の食材の価値を向上させます。こうした流れを予想してか、食肉業者のなかには国内産のブランド肉のPR(TVコマーシャルなど)を強化している団体もあります。

これだけではなく、ブランド力のあるイチゴやリンゴなどの果物、有機栽培の米や水産物、ブランド和牛などは輸出の拡大が見込まれています。むしろ、日本の経済成長にとってはこの部分のメリットの方が大きいともいえます。品質の高い日本産の製品が海外でも人気になれば、国内の飲食店にとって、近年ますます増加傾向にある外国人観光客向けのアピールとしても有効活用できるでしょう。

大筋合意に至ったTPPはGDPの合計が85%以上を占める6カ国が2年以内に国内での議会承認を得られれば効力が発生します。つまり、おおよそ2年後には実際の変化が起こりはじめると考えてよいでしょう。総じて、外食産業にとっては追い風が予想されていますが、ヒト・モノ・カネ・サービスという極めて広範な分野での自由化だけに、今は予想されていない影響が思わぬところで発生する可能性もあります。今後も各業界の動向を注視していく必要があるでしょう。

(※一部内容を変更しています。2017年6月8日)

参考:
焦点:TPPで牛肉輸入の外食などメリット、消費者は選択幅拡大|ロイター
TPPが食品、外食業界に与える影響(前編)~大筋合意の概要|FOODS CHANNEL
TPPが食品、外食業界に与える影響(後編)~企業の対策|FOODS CHANNEL
今さら聞けないTPP 2 TPPで強い経済を実現|NHK NEWS WEB

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    明日のレストラン編集部

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