飲食店で働く人のための情報マガジン by トレタ

連載
2018年6月25日

若き経営者たちの夢〈16〉李純哲氏・李純峯氏(株式会社FTG Company)

この記事をシェアする

東京・埼玉に38店舗を展開している「大阪焼肉・ホルモン ふたご」には、どの店にも生業店のような温かみがある。従業員がお客さまの肉を焼きながら焼き加減の説明をして、世間話や身の上話に及ぶこともある。この業態を生み出したのは大阪出身の双子の李兄弟。2010年に誕生した同社は、2015年にアメリカ・ニューヨークに出店するなど世界を視野に入れている。双子の兄である李純哲社長、弟の李純峯副社長に展望を聞いた。


左:李純峯氏 右:李純哲氏

「親孝行」から「焼肉文化を世界へ」

――飲食業をはじめたのはどのようなきっかけですか?
〈純哲氏〉親孝行をしたいという思いからです。僕らのおかんは大阪で焼肉店を経営していましたが、お客さまにおいしいと言われても儲からない。そこで、私は売れている焼肉店を一から勉強するために上京して、トラジに入社しました。30歳になったら独立すると決意して頑張りました。27歳の時に弟の純峯をトラジに誘って一緒に繁盛店づくりの勉強をしました。

〈純峯氏〉30歳の時に「大阪焼肉・ホルモン ふたご」1号店を五反田に出店しました。あれこれ話し合って誕生したのが黒毛和牛のカブリ、ゲタ、リブマキ、リブ芯の部位が1枚になっている「はみ出るカルビ」。この特長をきちんと説明するために、お客さまに密着してサービスをするというスタイルが出来上がりました。

――どの店も「お客さまに語りかける」という接客が徹底されていますが、どうしてできるのですか?
〈純哲氏〉成長ステージが明確に定義され、スキル向上を仕組化した教育プログラムを作っています。当初はアルバイトだけで運営できる店作りが目的で導入しましたが、それが発展して、教育が当社の文化となりました。

〈純峯氏〉研修内容は細かく分れ、全ブランドに共通しているビジネス研修、接客研修の他、他ブランドごとに異なるブランド研修があり、自社で運営しています。

――2013年から海外展開を進めるようになりましたが、なぜですか?
〈純哲氏〉それは焼肉文化を世界にということ。海外で寿司、ラーメンという日本食は定着していますが、焼肉もそれらに並ぶようにしていきたいからです。

〈純峯氏〉当初台湾、香港、中国とFCで海外展開していましたが、2014年12月ハワイ、2015年5月ニューヨークに直営で出店しました。特にニューヨークでの出店はビジョンを練り込む上で大きな学びがありました。

ニューヨーク出店で培った新展開のビジョン

――ニューヨークの店はどのような店ですか?
〈純哲氏〉ニューヨークのマンハッタン南西部のチェルシー地区にあり、お客さまは目的来店の人が多い。当初アジア系のお客さまが多かったのですが、地元に定着するにつれて客層はさまざまなものとなりました。

〈純峯氏〉客単価はチップを含め100ドルくらい。ニューヨークでは大衆店と高級焼肉店の中間の価格帯に位置し、僕たちが新しいマーケットを掘り起こした感があります。バーカウンターを入れて70席程度ですが1日3回転しています。今年の9月には、ニューヨークのソーホー地区に2号店を「肉亭ふたご」のブランドで出店予定です。現地では珍しい和牛専門店で客単価200~300ドルを想定しています。

――ニューヨーク出店で学んだこととはどのようなことですか?
〈純哲氏〉現地でヒットしている業態を見ながら、日本での展開を考えています。そこで生まれた店が2016年7月恵比寿に1号店をオープンしたサラダ専門店「GREEN BROTHERS」です。

〈純峯氏〉ニューヨークにはサラダを食べる文化が存在します。肥満を気遣う人が多く、街を走っている人も、スポーツクラブの数も日本に比べてはるかに多く感じます。日本でも健康を際立たせているスポーツクラブが伸びていますから、これからはヘルシーやウエルネスの分野が伸びると考えています。

――日本でサラダ専門店が有望だと感じる理由はどのようなものですか?
〈純哲氏〉経済成長とリンクしていると思います。成長途上の国では肉食の傾向にありますが、成熟した国では健康志向が強くなる。肉をたくさん食べている国もいずれはサラダを中心に食べるようになって、近未来はサラダ食が世界の主流となっていくと思います。

〈純峯氏〉サラダの店は、ファストフードがの主食が野菜に変わったという感覚です。現状、1食の満足度を整えるためにどうするか、男性客を取り込むために肉を入れてみてはどうかとかなど、メニュー変更を行って需要動向を見ています。

――これからサラダ専門店をどのように展開していく方針ですか。
〈純哲氏〉GREEN BROTHERSの価格は現状1000~1300円ですが、手軽に楽しんでもらうためには800円くらいの状態にする必要があります。これを実現するために生産者と連携し、セントラルキッチンで効率化します。

〈純峯氏〉サラダはコンビニでも販売されていて、お客さまの身近なところで買うことができます。これはコーヒーにも言えることで、コンビニのコーヒーを買う人もいれば専門店で買う人もいる。これと同様にサラダ専門店もブランディングが重要になります。

〈純哲氏〉1日3食ありますが、そのうちの1食をサラダにすることで身体の調子が整うことを感じ取り、気が付けばGREEN BROTHERSでサラダを食べることが習慣化しているというイメージです。

〈純峯氏〉極論を言うと、サラダで収益を挙げることを目指しているのではなく、健康的な生活というブランディングがぶれないようにすること。そこで、ヨガなどとコラボしたGBフェスを開催したり、運営したり、カルチャーの方向に進んでいけたらと考えています。

「WOW」でつながるグループを作る

――他の業態の日本での展開はどのように進めていきますか?
〈純哲氏〉まず、2016年から2017年にかけて業態を増やしました。GREEN BROTHERSの他に「肉亭ふたご」「BUTCHERS’MOTHER」「YAKINIKU FUTAGO 37West 17th St」「DEAR DAUGHTER」という具合。これによってサラダ専門店の客単価1000円から、ふたごの4500円、肉亭1万円、17th Stの1万5000円と価格面においてのポートフォリオが整いました。

〈純峯氏〉今年はふたごの地方展開を進めます。まず、名古屋、大阪、福岡ですね。地方都市は東京よりも、家賃・人件費を含め損益分岐点が低いことが大きなメリットです。地方の繁盛店の中にはふたごより客単価が高いところもあり、またふたごの客単価は東京より下がることはないでしょう。

――日本で展開する方向性も整ってきた印象がありますが?
〈純哲氏〉現在の当社の経営理念は「MAKE YOU WOW」「新たな価値を創造し、世界に驚きと感動を。」というものです。「親孝行」から始まり、「焼肉文化を世界に」となりましたが、その後見直しを行ってこのようになりました。

〈純峯氏〉1年間かけて何のために出店しているのかと考えました。その過程で出てきたことは、「お客さまに喜んでいただく」「新しいものをつくり上げる」、「感動してもらう」ということです。核心となったのは「自分の可能性を信じること」。これを教育に落とし込んでいます。

〈純哲氏〉これからは「WOW」でつながるグループを作っていきます。そのためにM&Aも想定しています。FTG Companyのはじまりは焼肉だったのかと言われる日が来ることでしょう。

【編集後記】千葉哲幸のコメント
私は過去5回ほど李社長・副社長にインタビューをしてきたが、この二人には一心同体を感じる。私の質問に対していつも兄である純哲社長から話し出すが、それを補足する形で弟の純峯副社長が会話に加わる。その説明が絡み合うことによって表現はより緻密になっていく。同社の経営理念は「親孝行」に始まり、「焼肉文化を世界へ」と視野を広げ、「MAKE YOU WOW」とより深くなっているが、共に同じ価値観を磨いてきたふたごだからこそ、他の事業家にはない強い確信を共有しているのであろう。

■「若き飲食経営者たちの夢」記事一覧

「若き飲食経営者たちの夢」

■おすすめ記事

河野祐治の大繁盛への道【1】繁盛店視察の6つの鉄則


大野先生の飲食店開業に必要なお金講座【1】借入はリスクではありません!

この記事をシェアする
千葉哲幸
この記事を書いた人

フードフォーラム代表。
柴田書店『月刊食堂』と、そのライバル誌である商業界『飲食店経営』の編集長を歴任するなど、フードサービス業の記者歴35年。業界関連の取材・執筆、書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

おすすめ5選

新着記事