飲食店で働く人のための情報マガジン by トレタ

連載
2018年6月8日

若き経営者たちの夢〈15〉 四家公明氏(株式会社イタリアンイノベーションクッチーナ)

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「料理を通して多くの人を幸せにする」を社是に掲げ、美味しさはもちろんのこと、化学調味料を使用しない(無化調)など、お客さまの健康までを追求する四家氏。1992年にスパゲティ専門店で起業し、看板メニュー「日本一おいしいミートソース」で知られるカジュアルレストラン「トスカーナ」など全店で17店(うちFC3店)を展開する。日本一を名乗るこの自信満々のネーミングや、四家氏への飲食に対する想いに迫った。


四家公明氏

独立準備でマニュアルを整える

――飲食業にはどのような経緯で入りましたか?
割烹を営んでいた父の姿がカッコよくて、小学校の低学年の頃から店の手伝いをして、将来は自分も飲食店を経営するものと思っていました。また、2歳上の兄がいて、私の全ての憧れでした。ローラースケートとか、バイクに乗るとか、兄の真似をして育ちました。新宿のディスコに連れていってくれたのも兄です。兄が喫茶店でバイトしているのもカッコよくて、飲食業に憧れるようになりました。

おしゃれなカフェバーをやりたいと、父に相談したのですが、「いきなり水商売はダメだ」という。私も酒だけの店だと競争に勝てないと思いながらも、父のような和食では店を構えるまで時間がかかるだろうと。そんなことを考えているうちに「ともかく新宿で働きたい」と思うようになりました。

――それがイタリアンの世界に入ったのはどのようなことがきっかけですか?
高校を卒業したばかりの頃、新宿西口に大行列の店があり、「こんな店で働けば将来繁盛店をつくれるだろう」と、その場で面接を申し込んだのです。それが私の修業した「スパゲティハシヤ」(以下、ハシヤ)です。

昔の飲食店は理不尽なことが多かったですね。お客さまよりも先輩の方が偉いとか。だから、新人が入ってもすぐに辞めていくのが当たり前。改善が必要だろうとマニュアルを作ると、先輩から「なんでお前の言うことを聞かないとダメなんだ」と言われたものです。しかし、独立した時に、このマニュアルの考え方はとても役に立ちました。

――独立開業したのはいつですか?
ハシヤでは7年修業し、1992年に26歳でスパゲティ専門店「とすかーな」を武蔵小山にオープンしました。「武蔵小山じゃスパゲッティとか専門店はうまく行かないよ」と言われましたが、自信満々でした。ハシヤの卒業生は、みなハシヤより値段を下げて営業していましたが、私は同じ価格にしていました。それでも、お客さまはたくさん来てくれました。

「無化調」は理念経営の証し

――スパゲティ専門店からイタリアンに移行するようになったのはどのようなきっかけですか?
先輩が立川に開業したイタリアンを見てからです。ワインの品揃えが豊富で、アンティパスト、チーズの盛り合わせ、ピザもありました。内装もカッコよく全てに衝撃を受けました。
そこで2号店の代々木店では、メニューやアルコールも種類を増やしました。

2号店が軌道にのるようになってから、イタリアに行くようになりました。ローマ、トスカーナ、ミラノ、ヴェネチアなどの店をまわって食材の使い方や調理方法を学び、帰国後に従業員を集めて、調理方法などを改善していきました。

――メニューで「日本一おいしいミートソース」をアピールしていますが、これはどのようにして生まれたのですか?
これも2号店から始めたことです。ある業者さまが「あちこちでミートソースを食べたけど、ここのミートソースが日本一おいしいね」という。この「日本一おいしいね」というフレーズが面白いとピンと来たんです。これをもっと磨いて行こうと考え、料理講習会に参加したり、料理人やソースメーカーの人からアドバイスをいただきながら、今のソースの形につくり込んでいきました。今では「日本一おいしいミートソース」が人気ナンバーワンです。

――メニューが無化調(化学調味料を使用しないこと)であることをアピールしていますが、どのような理由からですか?
小さな頃から化学調味料やそれを使ったものを食べていたら気持ちが悪くなったという経験が原点です。当社でもかつては化学調味料を使っていましたが、店舗展開していく中で「飲食店とはお客さまを健康にする役目がある」ということを自覚し、化学調味料を使用せずに質のいいメニューを出すことにしました。

無化調を取り入れたところ、従業員が店やメニューに誇りを持つようになりました。プライベートでも食品表示を確認する癖がついたようで、化学調味料を使ったものやジャンクな食事もしなくなりました。するとアトピー悩まされていた従業員の症状がよくなって来ました。これは私にとっても嬉しいことでした。無化調にすることでコストはかかりますが、お金のために商売をしているのではなく理念で経営をしているのだという意識がしっかりと定着しました。

「東京MEAT酒場」でイノベーション起こす

――イタリアンに加えて、日本の伝統的な居酒屋風の「東京MEAT酒場」を展開していますが、その狙いはどのようなものですか?
浅草橋の物件を確保し、ミートソース専門店の開業準備の最中、たまたま通りの両サイドにカッコいいデザインのイタリアンと焼き鳥店があるのを目にしました。イタリアンはガラガラ、焼き鳥店は満席で外のテーブルにもお客さまが一杯。「価値が高い店はどちらか」と考えた時に、それは満席になるほどお客さまに求められている焼き鳥店だと。浅草橋店のオープンは1カ月後に迫っていたのですが、デザイナーに変更をお願いし、2014年12月に東京MEAT酒場1号店をオープンしました。今、この業態は7店(うちFC2店)まで広がっています。

――既存のイタリアンと東京MEAT酒場とどのような違いありますか?
イタリアンの場合、オープンから軌道に乗るまで時間がかかります。それは外観だけだと客単価がわかりづらいため、周辺のお客さまがしばらく様子見をし、いい評判が聞こえてきたら店に行ってみようとなるためです。

一方、東京MEAT酒場のような店づくりだと、客単価の想像がつき、気軽に入店しやすい。だから、スタートダッシュが効きます。ただし、「酒場」とネーミングがあるとディナー帯が中心になりがちということもあります。

この業態を始めるに際して、会社名をヨツヤエンタープライズ有限会社から、株式会社イタリアンイノベーションクッチーナに変更しました。理由は、会社の名前が社長の名前だと個人の持ち物のような感じがしてきて、これでは社風的によくないと思ったからです。そこで会社にイノベーションをもたらす決断をして、社名を変えました。

――これからどのように事業を進めていきますか?
今は、従業員教育を充実させる段階だと考え、出店計画を立てず、物件も探していません。メニューチェンジと共に接客を向上させて既存店の売上アップを図っています。
当社の社是は「料理と通して多くの人を幸せにする」ということ。だから無化調でお客さまも私たちも健康になる。こうして私たちは心の豊かさを得ることができる。このように全てがつながっています。

【編集後記】千葉哲幸のコメント
「東京MEAT酒場」でも「日本一おいしいミートソース」は看板メニューとなっている。それが、ミートソースが下に敷かれて麺はその上にのせてある。食事をする目の前にはそのメニューの食べ方が書かれている。店のルールをお客さまに強いることでもあるが、お客さまはそれが楽しくてリピーターとなっている。商品力は信頼の原点ということを感じさせる。

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千葉哲幸
この記事を書いた人

フードフォーラム代表。
柴田書店『月刊食堂』と、そのライバル誌である商業界『飲食店経営』の編集長を歴任するなど、フードサービス業の記者歴35年。業界関連の取材・執筆、書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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