飲食店で働く人のための情報マガジン by トレタ

連載
2017年12月5日

若き経営者たちの夢〈6〉 吉田将紀氏(株式会社絶好調)

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外食産業を牽引する経営者たちの夢に迫る企画の第6回にご登場していただくのは株式会社絶好調代表取締役の吉田将紀氏である。同社は2007年6月に創業し、現在の業容は飲食事業9店舗、教育1施設、介護2施設、保育園1施設となっている。今年同社は会社設立10周年となる。その節目を迎えた吉田氏に「夢」を聞いた。


吉田将紀氏

吉田氏は「居酒屋甲子園」の創設者でもある大嶋啓介氏の下で、「てっぺん」の立ち上げメンバーとなり、現場を束ねる「総店長」として活躍していた。その吉田氏が独立するということで、当時飲食業界の人々から大いに注目された。絶好調の1号店である「絶好調てっぺん」は、東京・新宿、歌舞伎町の新宿ゴールデン街入口近く、雑居ビルの9階(最上階、22坪45席)というチャレンジングな場所に出店した。オープンは2007年11月11日の11時11分である。それから丸10年、同店で「絶好調てっぺん10周年!創業メンバー&歴代店長オールスター営業」が2017年11月11日に行われた。当時吉田氏は31歳、それ以外のスタッフは全て20代前半、若さに加えて青さがあった。率直に言って「元気が取り柄」であったが、その一生懸命な姿勢が共感を呼び、たちまちにして繁盛店となった。そして、当時のスタッフは現在みな経営者や幹部として活躍している。

教師の道から転じて、飲食業経営者の道を志す

――まず、10周年を迎えての感慨を聞かせてください。
ひとまず、「よかった」というところです。当社は百年企業を目指していますので、10周年はその通過点に過ぎません。10周年営業に続いて創業10周年式典を行いますが、それは業者さまはじめお世話になった人たちに感謝の思いを込めて開催するものです。そして、従業員の達成感、会社に対しての誇りを持ってもらうことも狙いです。

――飲食業を目指すことになったきっかけはどのようなことですか?
私は学生時代に教師を目指していたのですが、飲食業でアルバイトをしたことがきっかけで「先生と生徒」という関係性よりも「店長とスタッフ」の方が、距離感がより近く、仕事を通じていろいろなことを教えることができるということに魅力を感じるようになりました。

そして、飲食業はお客さまに行ったことがすぐに反応として現れてきます。料理がおいしいと「おいしい!」と言っていただくし、良いサービスを行うと「ありがとう!」という言葉もいただきます。飲食店で仕事をしていてとても楽しいので、「自分の店を持つ」と自分の部屋に貼り紙をして常に目にしていました。

――その後、どのような道を歩んだのですか?
将来の独立のためにいろいろなことを学ぼうと思い、多業態を展開している外食企業に就職しました。面接の時に「入社したら5年で辞めます」と面接官の人に話しました(笑)。この会社では200席の大箱の店長の経験をしました。

当時の私は元気な朝礼を行っていたのですが、上司から「元気な朝礼をやっている店が銀座にあるから、一緒に見に行こう」と誘われました。それが「てっぺん」創業者の大嶋啓介氏が店長を務める店でした。このことが私のターニングポイントとなります。

そこで行われていた朝礼は衝撃的でした。アルバイトが仕切っているんですね。スピーチがあって。私は初参加の時に外部からの参加者のトップバッターとなったのですが、この店のスタッフと同様に「夢」を熱く語りました。語った後にやってくる爽快感が素晴らしい。この朝礼は既にたくさんの人に知られて日本全国から体験しにやって来るというものでしたが、その理由がよく分かりました。私も何度も通いました。

初めての「世界一の朝礼」が終わった後に大嶋氏から「てっぺんという居酒屋をつくることが夢なんだ」という話を聞かせていただいて、私は「この人と一緒に働きたい」と思うようになりました。そして「てっぺん」自由が丘店の立ち上げメンバーとなりました。

社員の夢を叶え、支え合う

――独立に向けて立ち上げのメンバーをどのようにして募りましたか?
「てっぺん」に在籍していた当時に、社外の有能な店長を集めた「スーパー店長育成会」という勉強会を主催していました。この中で私の夢に賛同してくれる人、そして、てっぺんのお客さまで私と一緒に働きたいという人が集まってくれました。
いざ一緒に働いてみると彼らは私が考えるスタンダードに達していなくて、私はよく叱っていたものです。

お金がなくて販促費がかけられないので、どうすればお客さまに喜んでいただけるかということを一生懸命考えて、体を張って表現していました。そういうことがお客さまの記憶に強烈に残り、新宿という数多店がある中でも「もう一度行ってみたい」と思っていただけるのです。

――経営理念はどのようにして作っていきましたか?
創業時に理念をまとめた「理念書」をつくることを念頭に置きました。そこで毎週日曜日の仕込みの前の2時間それをつくるための時間に当てていました。最初に「食を通じてお客さまを元気にし、夢とありがとうが溢れる世の中をつくろう」という文言を私がつくり、創業メンバー一人一人の言葉を聞きたいということで、いろいろとディスカッションして、私が再構築をしていき、「大家族経営」という理念が整っていきました。この冊子が一度出来上がると独り歩きしていくものです。

――社員がキャリアアップしていく道をどのように整えていきましたか?
当社の特徴は業務委託制度による社員独立です。そもそも独立したい人は実力のある人たちです。このような人たちが会社を辞めていくと、会社は強くなりません。そこで独立したい人はそれが叶えられて本部も役立ち、お互いWIN-WINになってシナジーが生まれるということを考えました。

独立する人の不安要素は、まずお金がないこと。信用がないので物件契約もできにくい。成功する保証がない。そこで、独立する人には当社の既に繁盛している店を業務委託して営業してもらうようにしました。そこで、お金も、物件契約の心配が要りません。会社としては優秀な人材の流出がない。業務委託した店はそれぞれ自分が独立して営業しているので頑張って、直営店のときよりも売上げが増えます。

売上は全部本部に入れていただき、家賃やもろもろの経費を本部が支払って残りを社員独立の会社に戻す、という方法を取っています。その後、自分でやりたい店が見えてきたら自分で動いて構わない。もし物件が取れないのであれば本部も一緒に動きます。ここで業態設計など、いろいろなことをアドバイスします。

あらゆることにチャレンジし続ける

――多業態にしている理由はなぜですか?
それは、チャレンジしたいからです。飲食業は最強の業界だと思います。天候や季節によって営業状況は左右されます。商品開発を行い売るための販売促進を行います。食材は生ものできちんと調理します。人材を採用して育成します。お客さまも日々変わります。ですから、飲食店をつくりきちんと繁盛店にすることができれば、異業種にチャレンジしても通用するのではないでしょうか。

異業種と言っても、当社の場合は人間力を生かす業種です。介護も保育も直接人と関わりますし食事も提供します。複数のチームで、複数の人々に対応しますので、飲食業と似ています。

飲食業と同様、介護も保育も求人難で、離職の多い業界です。それでも、当社の「大家族経営」の理念が浸透したスタッフによって勝てると思い取り組んでいます。おかげさまでこれらの稼働率は業界水準をはるかに超えた高いレベルで推移しています。

――店舗展開はどのように推進していきますか?
当社が展開する業態は客単価4500円~5000円の間で原価率32~35%です。チェーン店が多い中で差別化するためにミドルアッパーを想定しています。ですから、日常使いというよりは「ちょっと特別な」という使われ方、「あの人と食事をするのであれば、絶好調の店にしよう」という具合です。

当社の会議の中で社員が自主的にプレゼンを行ってます。最近では22歳の社員が店長候補のプレゼンを行いました。それがとてもよかった。店長としてスキルがあるかと言えば、ありません。ただし、情熱とやる気は素晴らしい。そこで、当社ではそのような人を店長にしてほかの店長がフォローアップして「できる店長」に育てていきます。

長期的には、2025年30店舗30億円を目指します。エリアの基本は新宿で、圧倒的に勝ちたい。ミシュランで星を獲得する店もやりたい。海外出店もあるでしょう。これからも日々チャレンジしていきます。

【編集後記】千葉哲幸のコメント
「てっぺん」時代の吉田氏は、現場を統括する象徴的な存在であった。色白で細面の大きな瞳はいつもきらきらと輝いていて居酒屋の仕事に対する情熱を放っていた。私は2008年の暮れに吉田氏が主宰する「スーパー店長塾」に参加した。歌舞伎町にオープンしたばかりの「絶好調てっぺん」で日曜日の営業が終了した深夜1時に三々五々若者たちが集まってきた。彼らは「夢」を語り、他の人の「夢」を自分の「夢」の力とした。今彼らはその「夢」を現実のものとし、次のステージに向かっている。今回吉田氏の来し方とビジョンを伺い、吉田氏の誠実な経営姿勢を改めて知ることができた。吉田氏の経営は「仲間と支え合う」ことが根幹にある。このマインドはさらに求心力のある集団を育てていくことであろう。

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千葉哲幸
この記事を書いた人

フードフォーラム代表。
柴田書店『月刊食堂』と、そのライバル誌である商業界『飲食店経営』の編集長を歴任するなど、フードサービス業の記者歴35年。業界関連の取材・執筆、書籍プロデュース、セミナー活動を行う。2017年4月に「志を持ち、生き方を変え、日本を元気にする」を冠としたエーアイ出版『夢列伝』の編集長に就任し、活動領域を広げている。

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