飲食店で働く人のための情報マガジン by トレタ

連載
2017年11月16日

若き経営者たちの夢〈4〉 深見浩一氏(株式会社PrunZ)

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外食産業を牽引する経営者たちの夢に迫る企画の第4回にご登場していただくのは株式会社PrunZ代表取締役の深見浩一氏。同社は2006年6月に創業し、現在飲食事業が国内10店舗、海外8店舗。介護施設2つ、学習塾1つとなっている。創業以来12期の同社は着実に成長するとともに事業の多角化を推進している。同社を率いる深見氏に「夢」を聞いた。


深見浩一氏

PrunZのホームページを開くと若いスタッフが満面の笑みの集合写真となっている。深見氏はその中央にいるが、集団の中に溶け込んでいる。一人一人が同じ価値観を共有していることを実感させる。飲食業界で高学歴の経営者は今日珍しいことではないが深見氏は京都大学出身である。学生時代に飲食業でアルバイトを経験したことが今日の原点ということだが、深見氏は人と深くかかわる飲食業に魅入られたようだ。同社の飲食店を訪ねるとスタッフの礼儀正しさと清潔感が伝わる。トイレにはスタッフがつづった「感動ストーリー」が掲出されている。ここで働いていることの楽しさが伝わってくる。この空気感こそがPrunZの店に「また行きたい」と思わせる動機となっているのではないだろうか。

飲食業界の面白さに触れた20代の頃

――飲食業に魅力を感じたのはいつごろですか。
学生時代のアルバイトがはじまりです。私は社会体験のインプットをしたいということで飲食業を選びました。そこで弁当屋さん、洋食レストラン、居酒屋などで働きました。どこも繁盛店でしたが、従業員同士の関係がぎくしゃくしていて、「従業員満足」があればもっと繁盛するのでは、ということを考えていました。

学生時代は第三次パラパラブームで、大学4年生の時AVEX主催の全国パラパラ選手権に出て優勝し、賞金100万円をゲットしました。そこで当時京都にはなかった「気軽に学生がパラパラの踊れるクラブを営業しよう」と、大きなスペースで飲食業を営むオーナーに週1回貸していただくことをお願いしました。ここで私は「従業員満足の高い店」を心掛けたところ、この店はブレークしました。

――大学を卒業して、どのようなことを行いましたか。
将来は飲食業に進もうと考え、この分野に強い大手飲料メーカーに入社しました。花形のマーケティング部に配属されたのですが、自分としては学生時代に体験した「現場感」を失いたくなく営業部門に行きたいと思っていました。

そんな時ある雑誌で「プロ店長」の記事を読みました。「プロ店長とはどれほどのものか」と思い説明会に行くと担当役員が話す内容がものすごく格好いいのです。そこで、その会社に転職しました。

プロ店長とはそれに必要な教育を受けて、「プロ店長」として契約先に送り出されます。オーナーさんは「プロがやってきた」ということで「すぐに黒字転換だ」と期待をしてくる。どうしても事前期待と現実とのマイナスギャップが発生して全部自分に落ちてきます。ものすごくストレスがたまる仕事でした。しかし、私はここで成果を挙げることができました。そして、「30歳で独立しよう」と考えていたので、その願い通りに同社を退社しました。

毎日行きたくなる居酒屋を作る

――設立した会社の名前はPrunZですが、どのような想いを込めたのですか。
これは、Plus、Positive、Powerful、Passion、Possible、Patienceという自分の好きな言葉の頭文字をつなげたものです。それを集団で実行する(run)のでPrunズ。SではなくZなのは「好きを強みに、強みを尖りに」という教育方針への想いが込められています。

――どのような飲食店にしようと考えましたか。
小さな箱でFL(原価と人件費)をしっかりとかけた店。「毎日行きたくなる居酒屋」です。立地は市場の大きさと飲食店の数がマッチしていないという軸で、家賃が乗降客の割には安いというところを探した結果東東京になりました。そして、新小岩と本八幡にロックオンをして物件を探し、2006年11月に1号店を新小岩にオープンしました。

一緒に独立したのは前職の元部下です。はじめは1店舗をじっくり経営するつもりだったのですが、有難い事に元部下が続々と入社するようになり、背中を押されるように店舗展開を志向しました。2号店の亀戸は2007年9月、3号店の本八幡は2007年10月と立て続けに出店し、ここから1年半を出店しないで会社の体制を固めました。

――その中でどのようなことを心掛けましたか。
当時からも私の周りには「打って出る」といった拡大志向の経営者がたくさんいらしたのですが、私はじっくりと着実に、お客様から喜んでいただき、従業員満足度の高い会社をつくるという私の「夢」はかなっていました。

そこで、自分についてきてくれた人たちが「やりたい」ということを応援してあげようと思っていました。ここから当社の企業文化「みんなの夢をみんなで叶える」が醸成されて行きました。現在飲食事業は国内10店舗、海外8店舗、介護施設2つ、学習塾1つとなっています。

積極的な海外進出

――海外出店を進めていますが、そのきっかけはどのようなものですか。
スタッフのやりたいことを応援しようと考えていたときに、「海外展開をしたい」というスタッフが現れました。そこで海外出店を志す経営者の方々と交流するようになったところ海外出店に関するいろいろな情報を得ることができました。

そのような中で、シンガポールの老舗ゴルフカントリークラブのオーナーからお声掛けをいただきました。ゴルフ場の敷地の中で、スパやプールがあり、そこで家族がおのおの楽しんで、夜に食事をするというファミリーが利用する店を運営してほしいという内容です。

そこで、当社から海外で仕事をしたいという社員を2人送り込んで、その後の採用はオーナーのほうでやっていただきました。元々オーナーが持っていた飲食店をリニューアルしたものだったので人材は以前のものをそのまま受け継ぎました。既にチームワークもできていたので、あとは想いを浸透させれば良いという、幸先のいいスタートでした。

――海外出店に関しては昨年11月にJIFA(一般社団法人日本フードビジネス国際化協会)を設立しました。この活動の狙いはどのようなものですか。
これまで海外進出の事例はたくさんありました。現地はアウェイでありながら自分のやりたいようにやって失敗するという事例をたくさん見てきました。しかし、華僑やアジアの人は自分のホームでみな寄り集まって強いチームをつくっています。

各社それぞれにはさまざまな課題において強みがあります。そこでJIFAは海外進出という同じ目的で集まっている人たちが一緒になって取り組もうという趣旨です。前身はDOA(Dream of Asia)という組織で、「海外に出るときに私たちに声をかけてください」と周りに伝えてきました。JIFAはDOAの活動を発展させて、海外進出に際してチームづくりを提案し、成功や失敗事例を共有し、海外進出のためのプラットホームを担っていきます。

将来を見据え、飲食業界に貢献したい

――これからの夢を教えてください。
まず、現状ご依頼をいただいているコンサル事業を拡充すること。ここでは当社でこれまで経験してきた「人材育成の戦術」「サービスを均一化させる方法」「覆面調査の点数を上げる方法」といったものがメニューとして整理されています。これらの「人材育成のレシピ」を社外のみなさんとの共有化を広げていきたい。

そして、居酒屋甲子園を立ち上げた経験から、フォーラムを運営するノウハウがあります。それを企業に提供してきていますが、これらを一層広げていきたい。

さらに、新しい会社の在り方を模索し提案すること。これは香港のパートナーと組んで学んだことです。香港の会社は、いろいろな株主とのさまざまな分社化を推進します。例えば、香港で1号店を出すときと、2号店を出すときの会社は違う会社なのです。リスクヘッジをはじめいろいろな考え方に基づいてそうしているのですが、出店するときの発想がとても柔軟なのです。

出店するときに、投資して、物件開発して、オペレーションを行って、ということを全部自社で行うことはハードなことです。これに対して、出資してリターンがほしい人、いい業態のアイデアを持っている人、人は持っているけど業態を持っていない人、複数店舗のマネジメントが得意な人という存在がうまく集まり、ジョイントベンチャーを行うと新しい会社の形になります。これらのことに人材を投入して事業としていきたい。

この事業を行うためには現場感が重要です。私も定期的に店を入っています。そこでお客様から新人に間違われたりします(笑)。

飲食業界にはまだ閉塞感を感じています。M&Aが盛んになってきていますが、会社の在り方やストラクチャーの作り方にもっと選択肢があるのではと思い、数々の海外のスーパー金持ちから学んでいきたいと思います(笑)。

私は、外食市場の環境が大きく変化しているであろう2030年の後を見据えて飲食業界に貢献したい。このような新しい事業は、海外のことや他の会社のこともよく知っている私であるからこそできることだと思っています。

【編集後記】千葉哲幸のコメント
私が初めて深見氏と出会ったのは2004年のこと。当時私は『飲食店経営』編集長で、編集部主催のニューヨーク(NY)ツアーを毎年開催していた。そのツアーに参加していたのが深見氏であった。よくしゃべり、よく食べる若者は、夜ごと徒党を組んでNYの夜の街を探訪していた。その後、深見氏は居酒屋甲子園の設立メンバーとなるなど、私は取材者の立場で深見氏をウォッチする機会が増えた。私にとって深見氏のキーワードは「仲間」である。そのリーダーシップは「共に成長しよう」という旗印の下で大いに発揮されている。夢を描いて参入した飲食業はスタッフの自発的な提案を尊重し新事業を生み出し、理事長を務めるJIFAでも「共に闘う」ことをミッションとしている。深見氏には同社事業にとどまらず飲食業界全体に成長をもたらすプロデューサーとして大いに期待をしている。

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千葉哲幸
この記事を書いた人

フードフォーラム代表。
柴田書店『月刊食堂』と、そのライバル誌である商業界『飲食店経営』の編集長を歴任するなど、フードサービス業の記者歴35年。業界関連の取材・執筆、書籍プロデュース、セミナー活動を行う。2017年4月に「志を持ち、生き方を変え、日本を元気にする」を冠としたエーアイ出版『夢列伝』の編集長に就任し、活動領域を広げている。

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