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2017年8月14日

ドクター石原の大人の接客力講座 ―「困った!」に効くコトバの特効薬【2】お客さまにやんわりビシッと注意する

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接客には、さまざまな「困った!」がつきもの。対処を間違えると、事態をこじらせたり厄介な症状を引き起こすこともあります。大人クリニック院長のドクター石原が処方する「コトバの特効薬」を活用して、お店とあなたの元気を取り戻しましょう。

時には、ちょっと困った振る舞いをなさるお客さまに遭遇することも……。本日は、そんな時に役立つコトバの特効薬を処方します。

■今回の症状■
お客さまにやんわりビシッと注意する

お客さまだからといって、すべてを許す必要はありません。「これはさすがに……」と感じたら、ほかのお客さまの心地よい時間や大切な従業員を守るために、コトバの特効薬という武器で立ち向かいましょう。

症例1:静かなバーでグループ客が大盛り上がり

静かにお酒を味わうお客さまが多いバー。遅い時間に、初めての方ばかりの4人組が入ってきました。奥のテーブル席にお座りいただきましたが、みなさんすでにできあがっていて大盛り上がり。話し声や笑い声が店中に響いて、ほかのお客さまは苦笑いされています。

【オススメの特効薬】
みなさん、お友達同士ですか。そうですか。夜も更けてまいりましたので、もう少しボリュームを絞っていただけたら幸いです。お恥ずかしいことに、このビル、壁が薄くて。

【用法と効果】
もちろん場違いな騒ぎ方をしているほうが悪いんですが、初めての店でいきなりストレートに注意されたら、必要以上に反発を覚えかねません。しかも酔っ払っている状態だし。たとえば、こんなふうに関係を聞いたり、あるいは天気の話題を振ったりして少し打ち解けてから、ソフトに注意して反省を促しましょう。ビルの壁の薄さを嘆くのも、クスリと笑ってもらいつつ、せっかく来てくださったお客さまの気分を害さないための配慮です。

【危険なコトバ】
ウチはそういう店ではありませんので、騒ぎたいんでしたら、ほかのお店にいらしてください。

お客さまをムッとさせる可能性が高いという意味でも危険ですが、酔っ払って騒いでいるとはいえ、冷たく突き放し過ぎている点でも危険です。いちおうは「歩み寄れる可能性はないか」を考えるのが、店としての誠意であり懐の深さであり忘れたくない謙虚さです。

症例2:常連客が女性スタッフにしつこくアプローチ

手頃な価格で地域に親しまれている寿司屋。数ヵ月前に入った愛嬌たっぷりの女性アルバイトのおかげで、店の雰囲気もますます良くなりました。一人の常連の男性客が彼女を気に入ったようで、デートに誘ったり、時にはちょっとしたプレゼントまで贈っています。ここのところアプローチがややエスカレートしている気配も。女性の側はまったくその気はなくて、毎回どう対応していいか困り顔です。

【オススメの特効薬】
当店のアイドルは恋愛絶対禁止っていう掟なので、マネージャーとしてイエローカードを出させていただきます。

【用法と効果】
常連のお客さまだけに、きつい言い方はしたくないし、できれば気分も害したくありません。アイドルやマネージャーという言葉を出すことで当たりをやわらげつつ、イエローカードという表現を使って、歓迎されない行為をしている自覚を持ってもらいましょう。店として目を光らせているニュアンスも伝わります。ケンカ腰になる必要はありませんが、笑いながらではなく真面目な表情でビシッと言って、本気である気配を漂わせたいところです。

【追加処方 効き目が薄いときは】
行動があらたまらなかったり、店の外で待ち伏せしたりし始めたら、もう一歩踏み込んだ対処が必要です。ここは嘘も方便。その常連さんに「念のためお伝えしておきますけど、△△ちゃんの彼氏、けっこう血の気が多いタイプみたいですよ」と耳打ちして、ビビらせましょう。本人が嫌がっているという真実をなるべく伝えないのは、せめてもの情けです。

【危険なコトバ】
ほらほら、△△ちゃんが困ってるじゃないですか。

こちらとしては遠回しに「そのへんでやめてほしい」と言っているつもりでも、当人はたぶん冷やかされたと感じるだけ。勝手に「まんざらでもなさそう」と勘違いして、ますますエスカレートするおそれもあります。


イラスト:松浦清香

症例3:子どもが店を走り回っているが親は知らん顔

家族連れも多い郊外の居酒屋。ちょっとヤンキー風の若夫婦が、小さい男の子と女の子を連れてご来店。ご飯を食べ終わると、退屈した子どもたちが座敷を駆け回り始めました。ほかのお客さまに迷惑だし、思わぬ事故につながりかねません。ところが、父親も母親も知らん顔で、スマートフォンをいじりながらお酒を飲み続けています。

【オススメの特効薬】
(子どもたちに向かって)ぼ、坊や、お、お嬢ちゃん、そんなにあわててどうしたの! お父さんとお母さん、いなくなっちゃったの! ……あっ、いらっしゃった。

【用法と効果】
下手に出てお願いしても、むしろ下手に出れば出るほど、厄介な反応が返ってきそうです。ここは一芝居打って店内の注目を強引に集めることで、居たたまれない気持ちになってもらいましょう。「ふざけんな!」と責められても、あれこれ弁解せずに「お子さまにお怪我がなくて何よりです」とキッパリ言い切れば、反論のしようがないので黙ってくれるはず。帰り際に「こんな店、二度と来るか!」と捨てゼリフのひとつも投げつけられるかもしれませんが、望むところです。

【危険なコトバ】
ほかのお客さまにご迷惑ですので、お静かにお願いします。

至極まっとうな注意の仕方ですが、逆ギレされてなおさら厄介な状況を招く可能性が大。こう言ってすんなり納得する常識のある親なら、子どもが店の中で走り回っているのを黙ってほおっておいたりはしません。

ドクター石原のアドバイス:「何を守るか」を間違えないことが大切

「お客さまは神様」という言葉があります。最初に口にした三波春夫さんがこの言葉に込めたのは、自分たち歌手は客席には神様がいらっしゃると思って歌わなければならない、という思いだったとか。それがいつしか飲食店などのお客さまも含むようになり、さらに「お客さまは絶対権力者」といった間違った拡大解釈で使わるようになりました。

たしかに、店に来てくださるお客さまはありがたい存在ですが、何を言っても逆らえなくてどんなワガママも許されるという意味での「神様」ではありません。そもそも神様だったら、お店やほかのお客さまを困らせるようなことはしないはずです。

お客さまが困った行動に出たときに注意するのは、たしかに簡単ではないでしょう。だからといって、店の側が「相手は神様だから」という都合のいい言い訳を持ち出して来て、注意しない(できない)自分を正当化するのはあまりにも無責任です。

店の責任者として守らなければいけないのは、何の落ち度もないほかのお客さまの楽しい時間であり、それを提供するためにがんばっている従業員たち。タチの悪い意味での「神様」の気持ちや都合ではありません。言い訳にすがりたくなる誘惑を振り切って、注意すべきときには果敢に注意し、守るべきものを全力で守りましょう。言い方に気をつかう必要はありますが、その手の勘違い神様を怒らせたとしても、けっしてバチは当たりません。

■過去の記事

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ドクター石原こと石原壮一郎
この記事を書いた人

力検定」など、大人の振る舞い方や人間関係の極意をテーマにした書籍を次々に発表し、日本の大人シーンを牽引している。最新刊は、すぐに使える役立つフレーズが満載の「大人の言葉の選び方」。

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