飲食店で働く人のための情報マガジン by トレタ

連載
2017年7月4日

ドクター石原の大人の接客力講座 ―「困った!」に効くコトバの特効薬【1】オーダーミスに効くコトバ

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接客には、さまざまな「困った!」がつきものです。対処を間違えると、事態をこじらせたり厄介な症状を引き起こすこともあります。大人クリニック院長のドクター石原が処方する「コトバの特効薬」を活用して、お店とあなたの元気を取り戻しましょう。

飲食店なら業態を問わずにオーダーミスは起こり得ます。本日は、そんな時のコトバの特効薬を処方します。

■今回の症状■
オーダーミスでお客さまを怒らせてしまった

どんなに気をつけていても、完全にはなくせないのがオーダーミス。しかも、忙しい時ほど起きてしまいがちです。さまざまな状況に合わせたコトバの特効薬を処方しましょう。

症例1:大衆居酒屋で常連さんが呆れ気味

狭い店内は大にぎわい。新人のバイト君はパニック気味です。常連の30代の男性のお客さまがオーダーをしたいのになかなか気がつかず、お客さまは少しイライラ。ようやく「いつもの。レモンなしで」とオーダーしても、「い、いつものですか?」とバイト君には通じず、どうもかみ合いません。お客さまが「僕がいつものメニューと言ったら唐揚げだからね」とバイト君に説明するも、なぜだか「厚揚げ」だと勘違いして、提供してしまいました。「おいおい、唐揚げだって説明したのに。大将、しっかり教育してよ」と、お客さまも呆れ気味で大将に訴えます。

【オススメの特効薬】
ごめんごめん! バイト君がまだ慣れてなくて。○○さんが唐揚げにばかり入れ込むもんだから、厚揚げが嫉妬しちゃったのかもしれないね。

【用法と効果】
「ごめんごめん!」だけで済ませたほうが常連であることの快感を覚えてもらえそうですが、親しき中にも礼儀ありです。あえて「○○さん」と名前を呼ぶことで、威勢の良さの中にも相手を尊重する気持ちを醸し出すことができます。唐揚げと厚揚げを恋敵、常連さんを一世一代のモテ男に見立てられたら、まんざらでもありません。「よかったら熱い気持ちを受け止めてあげて」と厚揚げをサービスで提供すれば、ニヤリとしてもらえるはずです。

【危険なコトバ】
失礼いたしました。大変に申し訳ありません。

よそよそしく響くため、常連であるお客さまを寂しい気持ちにさせてしまうでしょう。ただし、バイト君はこうしたコトバで丁寧に謝ることが大切。大将のシャレの聞いた謝罪と、バイト君の丁寧な謝罪の合わせ技で、お客さまとの関係を一段と深めたいところです。くれぐれも、大将とバイト君のコトバの処方箋を逆に取り違えないように注意しましょう。

イラスト:松浦清香

症例2: 高級ビストロで上品なご夫婦がご立腹

何度か来店いただいている50代の仲睦まじいご夫婦。今回は奥様のお誕生日祝いでご来店。そんな大切な日に、乾杯のドリンクのオーダーを聞き間違えたのに続き、前菜のサーモンの「マリネ」ではなく「ムニエル」を出してしまいました。ご主人が「どうなってるんだ!?」とややご立腹のご様子です。

【オススメの特効薬】
せっかくのお祝いの日に水を差してしまって申し訳ございません。二度あったことが三度はないように、しっかり集中いたします。

【用法と効果】
エスコートしてきたご主人の顔をつぶさないためにも、まずは大切な日であるのは重々承知していることを強調しましょう。お決まりの言葉で謝るだけでは、お客さまも機嫌を直すきっかけがつかめません。「二度あることは三度ある」とメジャーなことわざを引用することで、お客様に「仏の顔も三度までですよ」とことわざを用いて気の利いた返しができるよう配慮するのが大人の接客力の見せどころです。

【追加処方 さらにひと押し】
前回、ムニエルをお召し上がりになって、美味しかったとおっしゃってくださったことが印象に残っていて、つい……。

など、過去の来店の様子をさりげなく伝えるのも効果的です。ハレの日に選んだ店で、お得意さま扱いをされたら悪い気はしません。

症例3:ブロガー風の男性客がムッとしている

新規オープンの若い女性に話題のカフェにその男性のお客さま一人で来店し、店内をキョロキョロ見わたし、調度品やメニューをせっせとスマホで撮影。ブログや口コミサイトに感想をアップするつもりなのでしょう。明らかに店内で浮いています。そんなお客さまの様子に警戒してしまったのか、オーダーを何度も聞き間違えてしまいました。お客さまはムッとして目も合わせてくれません。

【オススメの特効薬】
何度も聞き間違えて申し訳ありません……。ご注文いただいたのは当店のイチオシメニューなんです。よかったら、お味の感想聞かせてくださいね。

【用法と効果】
緊張感のある局面で、あえて味の感想を聞かせてくださいと面と向かって尋ねたら、たとえムッとしていても「美味しかった」あるいは「もう少し酸味が効いている方が好み」などと答えてくれるはずです。新しい店だからこそ、お客さまの感想を取り入れてどんどん良くしていきたいと言う気持ちも感じ取ってもらえるでしょう。お客さまから肯定の言葉を引き出せれば、距離もグッと近くなります。

【追加処方 さらにひと押し】
あちらのテーブルからの方がいいアングルで撮れますよ。

写真を撮りやすい席を勧めればさらに効果的。店内をあれこれ撮りまくっていることを責める気はなく、むしろ歓迎という姿勢を示すことで、ホッとさせつつ好印象を獲得できます。

【危険なコトバ】
どうか、オーダーを聞き間違えたことはネットに書かないでくださいね。

書かれるのを防ぐどころか、こう言ったら逆に書かれる確率を大きく上げてしまうでしょう。店側にできる悪口の防止策は、お客さまに店を好きになってもらうことだけです。

ドクター石原のアドバイス:ミスは店の評価を上げるチャンス

どんなに気をつけていても、ミスを完全になくすことはできません。悪化させないためには、初期対応が大切。スタッフのミスの場合でも、経営者や店長がすぐに出て行って、矢面に立って全力で謝りましょう。それが責任ある立場にいる人の、もっとも重要な仕事に他なりません。

起こってしまったミスに店がどのように対応しているかは、ほかのお客さまも興味津々で注目しています。いい加減な対応をしてしまったら、ミスで迷惑を受けたお客さまはもちろん、その場にいるお客さま全員に「ああ、このお店はダメだ」と見切りをつけられるでしょう。ミスを正面から受け止めて誠実に対応すれば、様子を見ていたほかのお客さまはもちろん、もしかしたら迷惑を受けたお客さまも、お店のファンになってくれるかもしれません。

ミスというピンチは、お店の評価を上げるチャンス。コトバの特効薬を活用しつつ、はりきって対応しましょう。もちろん、ミスを起こさないことや、ミスを減らすための努力も必要ですよ。

どうぞ、お大事になさってくださいね。

■次の記事

「困った!」に効くコトバの特効薬【2】お客さまにやんわりビシッと注意する

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ドクター石原こと石原壮一郎
この記事を書いた人

力検定」など、大人の振る舞い方や人間関係の極意をテーマにした書籍を次々に発表し、日本の大人シーンを牽引している。最新刊は、すぐに使える役立つフレーズが満載の「大人の言葉の選び方」。

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